嵩丸秘傳

あるときはサラリーマン。またあるときは和太鼓奏者。その真の姿は世を忍ぶ乱波者「嵩丸」が書き残した秘傳の書が発見されたようです。忍者専門サイト「Ninjack」の中の人もやってます。

忍者を束ねるということ

 

日本忍者協議会のすごさ

 

痰壺に痰を吐くかの如く、ひっそりと吐き出した忍者まつりのエントリが、思いのほか多くの人に読まれていて少し焦っております...笑

 

でも忍者愛の溢れるみなさんからは同調のコメントをたくさんいただいており、そう感じてたのは自分だけじゃなかったんだなと痛感しました。

 

一応言っておくと、決して批判だけではなく、これだけ期待が高いことをやっているのだからぜひともやりきって欲しいという想いを込めて書きました。

 

実際に日本忍者協議会のような忍者をとりまとめる団体が現れたのはすごく画期的なことなんです。

 

海外からは忍者が人気だけれど、どこに行ったらいいかわからない、という声が多く寄せられていて、その課題を解決するための「忍者を束ねる窓口的なもの」は確実に求められています。

 

All Japanで忍者を盛り上げるという思想はすごくいいことで、多分”最初は”国や官が主導でやらないと誰もできないことだと思っています。

 

そんなのお金があるところじゃないとできないからです。

 

忍者協議会が特にスゴイのは政治力ですね。

 

内閣府から年間1.2億円もの交付金を引っ張ってくることは、今までだったら考えられないこと。

 

地方創生の気流と忍者ブームがうまくかけ合わさって起こったことですが、この目の付けどころは絶対正しいと思います。

 

この目の付けどころと政治力とお金さえあればこそ、形にするところをもっと注力すれば絶対に成功するはずなんですよね。

 

そこが一番難しいのですが。。。

 

例えていえば、”忍者”というイイ「材料」、”お金”というイイ「調理器具」、”政治力”で作るいいレストランの「建物」までは揃っているのですが、お客様に極上の味を届ける肝心の「シェフ」がいない、そんな状況かと思います。

 

言いっぱなしではなくて「忍者という材料でお客様に極上の料理を提供する一流のシェフに必要なことはなんだろう」と考えてみたので、まとめてみたいと思います。

 

必要なことは以下の要素かなと思ってます。

 

1.忍者について継続的に勉強をしていること

2.忍者の定義に寛容であること

3.あらゆる忍者をリスペクトしていること

4.一般人の視点を持ち合わせていること

5.忍者とそれ以外の分野との共通点が見出せること

6.海の向こうの人に対する忍者の素晴らしさを伝えたい想いがあること

7.誰にも負けない忍者愛があること

 

あくまで個人の考えですが、ひとつずつ持論を展開していきます。

  

1. 忍者について継続的に勉強をしていること

 

よく「忍者を東京オリンピックに向けて」という声を聞きますが、忍者は東京オリンピックまでの盛り上げコンテンツなんかではなく、人類に未来永劫の知恵とロマンをもたらす画期的な存在だと思っています。

 

武蔵一族の習志野さんがあるとき「忍者を東京オリンピックまでの呼び水に終始するのはあまりにももったいない。忍者のスキルや知恵には現代人にとって大切なものがいっぱい詰まっている。」とおっしゃってました。

 

全くその通りです。

 

別に東京オリンピックが近いことが理由で、忍者が最近また注目されているわけではありません。

 

ひとえに山田先生が忍者を学術的に紐解こうとしてから、今の忍者ブームが巻き起こっているのだと思います。

 

改めて見直される忍者の真実には、大変大切なことや面白いことがいっぱい詰まっており、ブームの根底に「今までよくわからなかった忍者の真実が明らかになってきており、その実態が今の世にも実に役に立つし、面白いものであること」があるのであれば、それが人々の心を捉えている要素であり、そこを外してコトを成そうとしても成り得ないのはずです。

 

これは一定以上、忍者について自分で調べたり、話していたりしないとわからないこと。

 

逆に生半可な知識では、忍者をベースにコンテンツを考えた時、結局思考回路が以下のようになってしまいます。

 

東京オリンピック

→訪日外国人増える

→Ninjaって外国人に人気だよね

→じゃあオリンピックまでに忍者でなんかやるか

→とりあえずニンニン言ってたり、手裏剣投げたり、派手なアクションやっときゃいいよね

 

これでは勿体ないんですよね。

 

忍者にはもっと魅力的な一面がたくさんあり、しかもその一面はあくまで氷山の一角。

 

幸いにも、忍者にはまだまだ謎な部分がたくさん隠れています。

 

他の日本文化と違って忍者が面白いのは、忍者のミステリアスな部分、つまり未開の地を開拓できる知的アドベンチャーの世界が広がっていることだと思います。

 

そこを探求するのが忍者の愉しみ方の醍醐味の1つなんです。

 

一流のシェフはもっと美味しい料理を作るために、まだ誰も食べたことのないような食材を求めるでしょう。

 

その部分は学者に任せておけばいいということではなく、活動を支援したり、一緒になって探してみたりと、自分でも一緒になって忍者の謎を探求する楽しみを味わえる人でないといけないのかなと思います。

 

忍術書にも誰よりも勤勉に、という教えがありますしね。

 

2. 忍者の定義に寛容な人

 

「忍者とは何か?」

 

これって永遠のテーマですよね。

 

・忍術を実際に継承している人

・武術を忍術として捉え、日々鍛錬を積んでいる人

・一般人が持つイメージに合わせてアクロバティックな殺陣を行う人

・忍者が何をしていたのか根拠立てて研究する人

・全く新しい分野を忍者に紐付けて新しい忍者像を提唱する人

・文芸や芸術で架空の忍者を生き生きと描く人

・忍者なんて言葉を使うことなく、ただ情報収集と報告、時には工作活動を行う人

 

これの内、どれが本当の忍者だと思いますか?

 

この問いは、現代においては一言で忍者と言ってもその可能性が広すぎて、時に私たちに混乱と迷いをもたらします。

 

まず大前提として、この問題については仮でもいいので自分なりの答えを持っておくことが大事だと思います。

 

それぞれが思う忍者像と、自分の得意スキルを掛け合わせて、自分の思う通りの忍者を突き詰めていけばいいのです。

 

そして、多分そのどれも忍者なんだと思います。

 

忍者はその歴史からも時代によって形を変えて、その時々の人々の役に立って行きました。

 

時にはスパイとして、時にはエンターテイナーとして、時には僧にもなれば、薬品開発を行うイノベーターでもあります。

 

これだけの変容性を兼ね揃えた素材は他にないんじゃないでしょうか。

 

人それぞれの忍者の形があり、それが全て本当の忍者なんだと思います。

 

当然あらゆる形で世の中に現れるわけですから、カオスですよね。

 

でもその中に忍者の共通点を見出して、自分の中で思う忍者を押し付けることはなく、その全てを受け入れることこそが、忍者を束ねる人には重要な心持ちなのだと考えています。

 

でないと、伊賀や甲賀などのステレオタイプな忍者だけが忍者となり、その可能性が狭まってしまうからです。

 

もちろん忍者界のハイブランドは伊賀、甲賀ですが、忍者は全国に散らばっていたわけで、ブランドだけにこだわっていてはその本質を見失います。

 

広い視野で忍者を受け入れる度量が大切だと考えています。

 

3.あらゆる忍者をリスペクトしていること

 

そうして思い思いの忍者活動をしている忍びの方たちがいらっしゃいますが、この方たちは好きでやっているとはいえ、崇高な理念を持って活動している人もたくさんいます。

 

時には自分の貴重な財産や時間を度外視してまでも、自分が信じる忍者を広め、人の役に立とうとしているのです。

 

このような忍びの人達に対して、尊敬の念を持って接することは、忍者を束ねる人にとっては大事なことだと思います。

 

多くのミュージシャンは、CDが売れずに食えなくなって引退していき、今はライブや定額配信サービスによるレベニューシェアがメインになってきています。

 

その時代に乗っかれないと業界全体が廃れていきますが、忍者なんて特にそう。

 

なかなか食えない職業なのです。

 

この人たちの優れた才能と努力を、仕組みの力でなんとか食えるようにしていこう!

 

忍者業界全体に目を向け、イノベーティブな仕組みを構築して、そんな気概でコトを成す必要があります。

 

今忍者界に求められているのはそんな存在ではないでしょうか。


4.一般人の視点を持ち合わせていること

 

そして自己満足では絶対にいけません。

 

そこに何も価値が生まれないからです。

 

価値のないものは自然と淘汰されていきます。

 

一般人が今この瞬間求めていることは何か、を先見の目を持って捉え、しっかりとそれを満たす忍者のコンテンツを提供すること。

 

日本や世界を見渡し、どこに忍者を求めている人が多く存在していて、その人たちに届ける最適な仕組みは何だろうか、と常に考え、時には既存の忍者コンテンツを繋げてあげたり、ないのであればゼロから創り出すことができるのが肝要だと思います。

 

一般人はみんな忍者は大好きです。

 

でもなかなか接点はなく、いざ忍者を知りたい・体験したいと思っても、今は欲しい忍者にアクセスすることが難しい環境ではないかと見ています。

 

忍者の本質はブラさずに、手を替え品を替えて人々が求めるものをあてがっていくことができる中立的な存在が、忍者界にはまだまだ不足しているような気がしています。

 

というのもこれはなかなか一人でできるものでもないので、忍者らしくネットワークを作って、皆で結束して人々の求めるものを提供していく必要があるからです。

 

その意味では忍者協議会も結束させるところまでは良かったのですが、そのあとの連携体制の仕組みにまだ課題があるのだと考えています。

 


5.忍者とそれ以外の分野との共通点が見出せること

 

上の要素にも繋がってくるのですが、実際問題忍者だけでは限界があると思っています。

 

忍者の広がりを拡大するために必要なのは「忍者 × ○○」。

 

この組み合わせこそが忍者の可能性を無限大に広げるポイントであり、あらゆる分野に忍者が潜んで行く最強の忍術です。

 

しかもありがたいことに、忍者はあらゆる分野に対して親和性が高いです。

 

忍者×食、忍術×学校、手裏剣×バー、忍者×政治、忍者×心理学などのワードを並べてみると、何かアイデアを思いつきませんか?

 

何でも忍者をくっつけることができ、その幅広さは他に類を見ないポテンシャルです。

 

このアイデアが無限に出てくる人こそが、今後の忍者界を更に盛り上げていける人じゃないかなと思います。

 


6.海の向こうの人に対する忍者の素晴らしさを伝えたい想いがあること

 

どう考えても忍者を求めている人は海の向こうにいます。

 

そんなに大勢の人々が間違った忍者イメージに踊らさせれたり、よくわからないままで忍者に飢えていたりします。

 

ビジネスチャンスとかそういうことじゃなく、単純に忍者の素晴らしさをもっと多くの人に知ってもらいたい、と思える人がどれくらいいるでしょうか。

 

オタク文化を世界に発信するTokyo Otaku Modeは、Facebookから世界にオタク文化の情報を提供し多くのファンをつけて、今は越境ECで頑張っています。

 

海外の多くの人達に不足している忍者のサービスを現地に行って提供することをやってる人達もいますが、上述したように忍者の形は色々で、その多様性もしっかり伝えていかねばならないと思います。

 

となると物理的な制約があり、オフラインのみでは限界が来てしまうでしょう。

 

でもネットの仕組みを活用すればその距離はぐっと縮まるはずで、海外へのネットを通じた忍者サービス提供は大変ニーズのあるものになると思います。

 

忍者の良さ、忍者として活動していらっしゃる方々の素晴らしさを世界の人に知ってもらうには、IT知識と語学力は必ず必要になってくるスキルであると思えて仕方ありません。

 


7.誰にも負けない忍者愛があること

 

いろいろ挙げてみましたが、やっぱり一番はここに尽きると思います。

 

これらの忍者の変容性や多様性、可能性と本質研究などに対し、どこまで愛を持って向き合えるかどうか。

 

今忍者の団体や個人で何かしらの忍者活動をしている人は、本当に溢れんばかりの忍者愛を持ち合わせてますね。

 

そういう人たちと酒を酌み交わしたとき、忍者の話で何時間も盛り上がれるような愛がないと、基本的に忍者業界内のハブであったり、一般人と忍者業界のハブの存在はつとまらないでしょう。

 

こういう人達が法人を設立したりして集まり、甲賀のような自治組織の元に作っていく忍者サービスなどがこの業界を引っ張っていけると、忍者界は一層繁栄するんだろうなと感じています。

 

そんな人はいるのか?

 

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いくつか持論をあげさせていただきましたが、ここにさらに「社会人として最低限の全般的な仕事スキル」は必要になります。

 

あえて言うコトでもないかもしれませんが、今後起こることの段取りとかをせずにぐだぐだに終わるのは誰も気持ちよくないので、この辺はしっかり回せるスキルを持っていないと難しいでしょう。

 

さぁ、そうなってくるとこんな人いるのか?って感じがしてきますよね。

 

なんか「役小角の再来」って感じまでしてきますよね。

 

一人だけでは難しいかもしれませんけど、自分が知る限りでは数人集まればきっとこれも全然可能だと思うんですよね。

 

「忍者を束ねる」といったらおこがましいので、全国の忍者団体の方に利益を還元したり、協力したりして忍者業界を最大限盛り上げるためにある忍者会社とか作れたら面白いだろうなー、と思ったり思わなかったりしています。

 

その前身としてNinjackというサイトをやってみたりしているのですが、今後の展望などはまた今度気が向いたら書きたいと思います。